子宮頚がんは子宮の出口にできるがんです。近年20~30代の女性に増えており、この年代の女性がかかるがんの中で最も多いものです。
子宮頚がんの原因は発がん性(ハイリスク型)のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。HPVは性交により感染します。約8割の女性が生涯に一度は感染する、ありふれたウイルスで、性交を持つ限り、何度でも感染する可能性があります。
HPVに感染しても、90%は免疫力で自然にウイルスが排除されますが、約10%はHPVの感染が持続し「子宮頚部異形成」という前がん状態になります。この段階であっても80~90%はウイルスが排除され自然治癒しますが、最終的にはHPV感染者の0.15%が数年~10年を経て子宮頚がんに進展します。
子宮頚がん検診(子宮頚部細胞診)は、子宮の出口を覆う細胞をこすりとってがんが無いかどうかを調べる検査です。子宮頚部異形成という前がん状態以上のものを見つけることができる感度が高い検査です。1年に1回検診を受けていれば、前がん状態の段階で発見することができます。
この段階で見つけることができるかどうかで、子宮を温存できるかどうかが決まります。つまり、前がん状態が見つかっても80%以上の人が自然治癒しますが、前がん状態が治癒せず残念ながらがんに近い状態または早期のがんに至ってしまった場合には、子宮頚部の部分切除を行います。この手術で100%治癒させることができ、また子宮は温存できるため、妊娠・出産が可能です。女性にとってはこの段階で発見できるかどうかは、人生の選択にかかわる大切なことです。
2009年、日本でもHPVワクチン(子宮頚がん予防ワクチン)の発売が開始されました。ハイリスク型HPVには16型・18型・52型・58型・33型・31型など、約15種類の型があります。日本人の場合は、このうちの16型が原因で子宮頚がんになる人が、子宮頚がんの女性全体の45%、18型が原因の人が14%を占め、特に18型は「子宮頚部腺がん」という検診で見つかりにくい予後が悪いがんの原因として最も多いとされています。
従来のHPVワクチンは、HPV16型・18型に対する免疫をつけるワクチンです。このワクチンを接種すると、子宮頚がんの原因の約65%を占めるウイルスへの感染を防ぐ免疫力(抗体)がつくため、理論的には子宮頚がんの65%を防ぐことが可能です。また、新たにHPV16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型に対するワクチンができました。このワクチンでは子宮頚がんの原因となるHPV型の約90%をカバーします。
サブユニットワクチンと言われるウイルスのDNAを含まないワクチンですから、ワクチン接種によりウイルスに感染する確率はゼロです。副作用も少なく、注射部位の痛みや腫れが主な副作用ですが、重篤な副作用の危険性は他のワクチンと同程度かそれ以下です。 3回のワクチン接種を行って初めて有効な免疫力が付きます。
感染を防ぐ効果は10年以上持続するとされていますが、正確にいつまで効果が続くかは不明です。ただ、推計によると20年程度は効力が続く可能性があるとされています。
10歳以上の女性が接種対象で、2回または3回の接種が必要です。
1回目の接種以降、2回目の接種は1回目の接種の1ヶ月後、3回目の接種は1回目の接種の6ヶ月後に行います。(ワクチンの種類によって多少違いがあります)
10歳以上の早い年齢への接種が推奨されていますが、20~30代やそれ以上の年代のまだ発がんされていない女性にも接種は可能で、効果は十分あるといわれています。
国内臨床試験成績によると、注射部位の副反応は疼痛、発赤、腫脹など、全身性の副反応は疲労、筋痛、頭痛などがみられる場合があったという例があります。
ただし注射部位の副作用はほとんどが軽症から中程度で、3回の接種スケジュールを途中でやめてしまう程の影響はないそうです。
ワクチンは子宮頸がんから多くみつかるHPV16型とHPV18型の感染を特に予防します。
しかし全ての種類の発がん性HPVの感染を予防できるわけではありません。
また、接種前に感染している発がん性HPVを排除したり、発症している子宮頸がんや病変の進行を遅らせたり治療することはできません。
ワクチンを接種された方も定期的に検診をお受けいただくことをお勧めいたします。
※接種は自費診療となります。価格やその他の詳細についてはお気軽にお問い合わせください。